「商標権」について学んだこと・感じたこと
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出願、審査の負担を軽減する包括概念表示
「包括概念表示?」「上位概念、中位概念、下位概念?」
なんでしょう。。この言葉。。
「類似商品・役務審査基準」をよくみると、指定商品・指定役務の類似しているものが一つの括りとして纏めた属性のようなものを感じる。これらの一部は2段階、もしくは3段階の階層的になっていることに気が付く。
まるで、会社の組織図みたいだ!!(笑)
他にも鎖線で複数の指定商品・指定役務を一括りにしているものも発見できる。これが包括概念表示であるという。
ちょっと、分かり難いかもしれないですが実際に下の図を見てみると階層になっているのがわかります。
この階層が上位、中位、下位概念であり、□で囲った部分が上位概念です。
下記は第30類の指定商品の一部です。
・菓子(肉・魚・果物・野菜・豆 類又はナッツを主原料とするものを除く。)
(1)和菓子
あめ、あられ、あんころ、おこし、かりんとう・・・
(2)洋菓子
アイスキャンディー、アイスクリーム、ウエハース・・・
・パン
・サンドイッチ
・中華まんじゅう
・ハンバーガー
・ピザ
・ホットドッグ
・ミートパイ
ここからが大切なこと。
なぜ「包括概念表示」や「上位・中位・下位概念」が存在するかというと、出願人側、審査する側の負担が軽減することができるからという。商標は言葉一つで意味合いが随分変わってしまい、企業の利益が損なわれる可能性がある。ゆえに慎重になり商標出願や審査には私達から見えない膨大な手間や調査、作業が行われていることに気が付きます。だからこそこういう枠組があることで、一般の人から見えない作業の流れをスムーズ化にするって学びました。申請や審査の効率化はとても重要と思います。
ほんと、言葉一つ間違えられないです。
おっちょこちょいの管理人には難しいかも~~(>_<)
区分と類似群コードの違う!!
まずは、今までの復習。
商標の権利範囲を考えるとき、商標法の「類似商品・役務審査基準」の規定に基づき指定商品・指定役務の区分で分かれていることを知った。その区分は第45類まであり、第1類~第34類は「指定商品」、第35類~45類は「指定役務(サービス)」になるということ。指定商品と指定役務の違いは、手で触れるような有形の商品など製造業の生産に関するものの多くは「指定商品」になり、逆に接客など形にできないサービスに関するものは「指定役務(サービス)」になるということを学んだ。
ここから次の重要なポイント。
なるほど~、わかりやすく区分で分類されているのね!!と思って深く考えず区分を記入し出願すると誤った判断になりやすいことに気がついた。これはトラブルになりやすい。なぜなら自分が認識している権利範囲と特許庁が許可する権利範囲の違いが生じやすくなるからだ。
実は審査をする際、特許庁は先に出願した商標と類似性があるか「類似商品・役務審査基準」に基づき判断される。
しかし、その判断は指定商品・指定役務の「区分」ではなかった!!
これにはちょっと驚いた。区分は類似性でグループ化している訳ではな~い!!(*'▽')
更に区分は国際分類表に基づき対応していくので、今後も表示変更や区分移行が行われることもしばしばある。
よって指定商品・指定役務の区分は類似の範囲を決めるものではないということ。
区分では類似性の判断ができないので、日本独自の類否判定ツールとして「類似群コード」が割り振られた。
下図は、第32類の指定商品と類似群コードの一例。(※類似商品・役務審査基準より抜粋)
第32類の「区分」には、ビールや清涼飲料等が含まれる。
しかし、区分は同じでも類似群コードは違うので類似していないと判断されます。
ビール:28A02
清涼飲料:29C01
「類似群コード」でわかったこと。
・類似群コードは、商品・役務ごとに付けた5桁の記号で、記号が同じ商品・役務同士が似ていると認識される。
・他人の登録商標と似ているか審査する際にチェックする方法の1つ。
・日本独自の分類方法で、8つの「共通性」の観点から特許庁が決めている。
・区分は分類であって類似しているわけではないということ。
※そもそも基準の国際分類自体が似ている商品ごとに分類している訳ではない。
・類似群コードは似ているものと「推定」しているのであって、「確定」ではない。
・区分が同じで類似群コードが違い、逆に類似群コードが一緒で区分が違うこともあるということ
・指定商品・指定役務は出願の時に記載するが、類似群コードは記載しなくても良い。
※だから事前によく調べる必要がある。
下図は、類似群コードの定義です。
類似しているかは、8つの「共通性」が重要なのね!!
区分が異なる類似群コードの「他類間類似」を学ぶ。
類似群コードって、シンプルのように見えてちょっと奥が深い。正直??になります。
類似群コードは特許庁が審査の時に類似性があるかどうか判断するためのものだけど、そこで注意しなくてはいけないのが、「他類間類似」と「35類の小売等役務」だ。
他類間類似とは?
類似群コードは同じで、区分が異なる場合を「他類間類似」いいます。
分かりやすく他類間類似商品・役務一覧表があります。
類似群コードが一緒なら類似していると判断されます。
また、1つ区分内での類似群コードは基本は22個までであるという。
(但し、35類の小売等役務は除く。)
そして、もう一つ重要なことを教えて戴きました。
商標には、「商標の使用疑義」という言葉があります。実際、出願の際に使用意思があるかどうかの判断は難しいのですが、あまりにも広範囲での権利を出願する場合は「使用疑義」が生じ、その証明書を提出しなくてはならないという。
使用疑義が発生する場合。
35類の「小売等役務」を除く、全般の商品および役務の類似群コードは22個まで。
23個以上の場合は、3条1項柱書の「商標の使用疑義」が生じると定められており、商標の使用証明、未使用ケースは使用意思の表明と事業予定の証明が要求される。
そして証明書類等が提出した場合は「商標の使用疑義」は解消し、また指定商品(役務)を削除補正して、類似群コード数を22個以下にしても疑義解消されるという。
なるほど~。(*^▽^*)
使用目的や意思が明確になっていない場合は権利範囲を幅広く出願できるとは限らないのですね。
商標は先に申請した順番でもあり、会社の命運にもつながる。つまりスピードは重要視される。
だけど使用目的が明確でない乱雑な商標登録は混乱を招く可能性だってある。
そりゃ~、特許庁もきちんと審査するために証明書を提出して頂き慎重になるのは当然のことですね。
さてと、ここからも重要ポイントの一つ。
「小売等役務」はとても厄介だ。上手く説明できるかな?
とういことで、続きは次回へ。
第35類 小売等役務の類似群コードは特殊だ!!
まず、復習から。
前回、 区分が異なる類似群コードの「他類間類似」を学んだ。
また1つ区分内での類似群コードは基本は22個まで認められていることも学んだ。
しかし例外の区分があるという。それは、「第35類 小売等役務」だ。
この区分だけは特殊だということに気が付く。
「第35類 小売等役務」とは、
小売・卸売業の取扱い商品が幅広く、区分も多い為費用面の負担軽減のため法改正され導入された区分のこと。このことにより、小売・卸売業は1つの区分出願で済むようになったという背景がある。
しかし小売業だからといって、例えば販売に関する「飲食料品の小売又は卸売の業務において 行われる顧客に対する便益の提供」と「農耕用品の小売又は卸売の業務において 行われる顧客に対する便益の提供」が同じ類似群コードになるのも変だ.。そこで小売等役務ではちょっと特別なルールになっているという。
そのルールとは、
・「第35類 小売等役務」の類似群コードは22個ではなく1個まで。
・類似群コード「2つ以上」指定していると、役務の範囲が広すぎるので商標使用の疑義が発生がする。
・小売等役務の区分だけ、通常とは別の「35K✕✕」(✕✕は数字)という類似群コードが割り当てている。
・その中でも類似群コード総合小売等役務の「35K01」は、さらに別格である。
なんだかちょっと難しいけど、この区分だけ要注意だ。
下の図は、35類の類似群コードですがその類似性判断は複雑でとても分かりにくいことが読み取れる。
とにかく35類では類似群コードが2個以上と判断されれば使用の疑義が発生し、証拠書類を提出しなければいけない。
また総合小売等役務に関しては百貨店、総合スーパー、総合商社等のためのものであり個人は商標の使用前提になるものではない。
そりゃ~そうだって思った。
小売・卸売は個人でも販売できる。だからこそ35類は特別ルールで規制しないと商標の権利範囲がめちゃくちゃになって身近な百貨店やスーパーまで影響が及ぶ。そうなると私たちは安心して買い物が出来なくなる。
そういう意味ではとても重要な内容と思いました。
あらためて、商標とは安心して事業が継続できるものでもあると思いました。
ネーミングは長期間市場から守られ、他社の開発や販売力を低下させる力がある。
ここまで商標登録の区分と類似群コードを学んできた。
そこで、1つ見えてきたことがあった。
それは、商標登録には戦略性があるということに気が付いた。
今までは、商標登録は単に権利範囲を保護するというどちらかというと守備的意識を持っていた。
一生懸命守ってきた商号や屋号、新規性や開発製品の名付けた大切な名前を「守る」という視点で見ていた。
いやいや~、これは違うぞ。。(>_<)
「攻撃は最大の防御」という諺があるが、逆だと思った。
「防御は最大の攻撃」という言葉の方がしっくり来る。
どういうことかというと、
権利範囲を保護すれば、相手は攻撃が出来ない。つまり攻撃能力を奪ってしまう。
商標登録には、こういう効力があるということに気が付いた。
しかも特許より安い費用で一定範囲を守り、追随してくる多くの企業から長期間攻められない。
つまり、戦略的に活用すれば企業にとってとても強い武器になる!!と確信した。
具体的に分かりやすく説明すると、
企業にとって重要なことは「開発」と「営業(販売)」だ。
まずこの2つはセットだ!!ということに気が付いた。
管理人は、今まで開発した製品を名前を守るために商標登録をすると考えていた。この視点しかみていなかった。
商標登録を行うと、後発企業は
①その名前で商品開発が出来なくなる。つまり開発能力を奪われる。
②その名前で販売が出来なくなる。直販だけでなく、販売店にすら卸せなくなる。つまり販路開拓能力を奪う。
①はとても重要だわ。
シンプルな名前や言葉から連想しやすいワードほど効き目が強いと思う。
例えば、どこの食卓にもある味の素の「アジシオ」。
名前から「味のついた塩」だって簡単に連想が出来るほどシンプルな名前だ。
最初の登録日が1963年3月8日。指定商品は「食塩を主成分としこれに化学調味料を加えてなる特殊調味料」
この登録により他社は、「味のついた塩をイメージさせる調味料」をテーマにした開発が出来にくくなる。
仮に開発しても、「アジシオ」を超える商品イメージは弱いものになる。
これが防御でもあり最大の攻撃力につながる。。
それから30年の年月が過ぎ、
1990年代に登場したのが、株式会社ダイショーの「味/塩こしょう」。
登録日は1993年8月31日で、指定商品は「こしょうと塩とグルタミン酸ソーダを調合した調味料」
おぉ。これは面白い。(*^▽^*)
ダイショーは、ネームに漢字を入れ、指定商品に「こしょうと塩とグルタミン酸ソーダを調合」と言っている。
つまり、アジシオは食塩を主成分としているが、ダイショーはアジシオと別の調味料だ!!って強調している。
確かに確かに~~。
塩とこしょうが混ざっている調味料なら、食塩ではないと思う。別の調味料と管理人も思う。
実際、この時期に塩コショウが混ざった調味料が販売されたのを記憶しているし、バーベキュー等でよく使用したことを覚えている。ここから分かることは、1963年~1993年までの約30年間味の素の「アジシオ」は市場で権利が守られ、その間に家庭の食卓で必須アイテムになった。
そして30年間も他社の開発や販売の追随を許さなかった!!
またこの商品はロングセラーになりよく売れていた。この状況を見て更にエスビー食品が動いた。
それから26年もの年月が過ぎた2019年1月18日、エスビー食品の「S&B味付塩こしょう」が登録された。
指定商品は、「調味料で味付けした塩入りこしょう」。
あ~はっは。(≧▽≦)
エスビー食品は、味付けした塩入りのこしょうであって、塩ではなくこしょうがメインと強調している。
しかも登録が認められるように、商品ロゴに会社ロゴのS&Bを入れてきた。
こりゃ~、面白過ぎる!!
これらの「味」「塩」「こしょう」を含む調味料合戦をみると、製品名の重要性が強く感じられる。
消費者にぱっと一目で理解してもらえなければ購入してもらえない!!だから名前は本当に重要。
しかも強力なインパクトのある名前が登録されれば、長期間その権利は守られ他社の開発を遅らせることが出来る。更に販売力も低下させられる。商標には、実はそういう力があるということが分かった。
これは、すごい力だ!!
ネーミングは長期間市場から守られ、他社の開発や販売力を低下させる力がある。
今日、この調味料合戦が面白くてスーパー2店舗へ行き確認してみました。
「アジシオ」は塩のコーナーで販売され、調味料コーナーに「S&B味付塩こしょう」が陳列されていた。
つまり「塩」と「味付け塩こしょう」は別の調味料なのですね!!
ちなみに2店舗ともダイショーの「味/塩こしょう」は無かったです。
あ~、面白かった!!
②以降の続きは次回へ。